長岡小嶋屋

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越のむらさき

布海苔の入ったへぎ蕎麦は市民が誇るふるさとの味。遠方からの来客や帰省した家族を連れて行くのに「長岡小嶋屋」は鉄板の店です。
つるりとした喉越しの蕎麦に欠かせないのがすっきりした味わいの麺つゆ。この味に慣れていると他の麺つゆが甘い?と感じる人も多いのではないでしょうか。

この麺つゆに、「越のむらさき」の醤油が使われているのはあまり知られていません。お地蔵さんのマークがついたお馴染みのだし醤油は家庭で親しまれていますが、長岡小嶋屋で使われているのは本醸造の濃口醤油「長生」と薄口醤油「白王」。どちらも超ロングセラー商品です。

長岡小嶋屋の直営店は、長岡市に2店、新潟市に2店、東京に1店、合計5店舗ありますが、安定した品質を確保するため、麺つゆは一括して工場で製造されています。製造を担当する三沢部長(写真右)と販売促進を担当する渡辺さん(写真左)にお話を伺いました。

長岡小嶋屋の創業は昭和40年。いつからこの醤油を使い始めたか、きっかけははっきりとはわからないそうですが、初期の頃は長岡駅前のニューロンデパートに店舗があり、越のむらさき(商号は昭和以降「川上兄弟合資会社」から3回変わり現在に至る)がある摂田屋の隣町・宮内に小嶋屋の製造工場があった縁で使い始めたのではないかとのこと。

他にも市内の色々な醤油屋さんからも仕入れていた経過を経て、越のむらさきの醤油に絞ることになったのですが、一本化するタイミングで当時の醤油の営業担当の平澤さんが、小嶋屋の製造担当していた板倉さんのところへ通い詰め、一緒に試作を重ねました。
平澤さんは20年前に退職しましたが、辞めるまでずっと小嶋屋さんの担当を続けていました。二人の関係性は今でも語り継がれるほどで、取材に応じてくださった越のむらさきの星野さん(写真右)は「あの醤油を配合したらいい味になったとか、年越し蕎麦の販売に手伝いに行っていたとか、平澤から小嶋屋さんのエピソードはよく聞いていました。」と教えてくれました。メーカーの垣根を超えて作り上げられた味なのですね。

右2つが麺つゆに使用する「長生」と「白王」。その隣がお馴染みの「特選かつおだし越のむらさき」。
その隣は「本醸造しょうゆ」で「長生」の家庭向け商品。長岡らしい茶色い煮物を作るのに欠かせません。

濃口醤油の長生と薄口醤油の白王。光に当てて色を比べると薄口醤油の方は色が明るく赤いのがわかります。大豆の分量によって違いが出るそう。
どちらも醤油の品評会で評価の高い醤油。控えめな業界なのであまりPRはしないそうですが、味と香り、色が評価のポイントで割烹や料亭でも使われている自慢の醤油なのです。
「昔から愛されている味にファンが多いので味が変わらないように努めています。地元の方に慣れ親しんでもらっているのは嬉しいしありがたいですね。」と星野さん。東京の醤油との違いを聞くと、「大手メーカーは全国のお客さんが相手だけど、地元のメーカーは地元に愛される味を作っています」と答えてくれました。

人気の蕎麦屋さんなので、麺つゆの量も相当なもの。300ℓの大容量の釜を使って、年間に200回ほど作っているそう。使用する醤油の量は年間およそ10t。越のむらさきではあらかじめ小嶋屋で使う量を想定して醤油を製造するほどです。
麺つゆは、醤油と砂糖やみりんを加えて加熱する「かえし」を作ってから出汁を合わせますが、作った「かえし」を3週間も時間を置いて寝かせているのだそう。そうすることで角が取れてまろやかな味わいに仕上がります。効率重視の工場のイメージとはかけ離れたゆっくり時間をかけた作り方に驚きました。

布海苔入りのそばに合うように、スッキリした味に仕上げる麺つゆは関東に比べると甘さ控えめ。この味が気に入って麺つゆを購入する人もいるのだとか。

地元で使う人を考えて味を保ち続けるメーカーと、お客さんの期待を裏切らない蕎麦屋さん。
いつも変わらないふるさとの味は、老舗企業の関係性で作られていました。

お店・蔵のご案内

越後長岡小嶋屋 殿町本店
長岡市殿町2-2-9
0258-39-0543

越のむらさき
長岡市摂田屋3-9-35
0258-32-0159