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長岡市内の人気店「安福亭本店」。県内の雑誌でもたびたび取り上げられる名店で、お昼時には多くの人が訪れます。
安福亭のラーメンは潔く醤油味の一択なので、醤油は欠かせない存在。実は、創業時からずっと変わらず同じ醤油を使っています。
店主の家合さんとこの醤油の出会いは意外なところから。安福亭を始めるずっと前、市内にある「居酒屋」という居酒屋で居候をされていた時に、そのお店で使っていた醤油が平石醬油店(のちに合併して新潟県醬油協業組合になります)だったことがきっかけです。
22歳でお店を開く前に、すでに醤油メーカーさんとつながっていられたとは驚きです。
醤油も色々な種類があるので他の醤油を使おうと思ったことがあるのでは…と素人ながら考えたのですが、家合さんは「お客さんが喜んでくれるから変えなくてもいい。変える気はない。」と、一度も醤油を変えようと思ったことはないのだとか。
地元で愛されているお店で、しっかりと地元の醤油が使われているのは嬉しいことですよね。
ラーメンに使う醤油は、生の醤油ではなくチャーシューを煮た醤油である「かえし」を使用。
肉の旨味が染み出たかえしは、味の厚みが増すのだとか。かえしの段階ですでに安福亭のラーメンの香りがします。通常火入れをすると酸化のスピードが速くなるそうで、3日以内には使い切っているそうです。
醤油の消費量はなんと月に約400ℓ。人気店となるとすごい量ですね。
家合さんはとても気さくなお人柄。お忙しい開店前の時間帯でしたが、明るく迎え入れてくださいました。
醤油以外も材料はなるべく地元のものをと考えているそう。
醤油の製造を行う新潟県醬油協業組合の佐田さん(写真右)と、商品の販売を行うホクショクの佐藤さん(写真左)。長年のお付き合いがある家合さんと昔話に盛り上がりました。
お二人にとって地元の飲食店で醤油が使われることは誇らしいこと。地元の味を守るという責任も感じながら醤油作りに真摯に向き合っています。普段はアピールすることはないそうですが、人気店の味の要になっているのは嬉しいですよね。
普段から安福亭のラーメンがお好きだというお二人。こだわりの自家製麺が肉の旨味が染み出た醤油味のスープによく絡みます。
燕三条系のこってりラーメンですがスープは意外とさらりとしていて、全部飲み干してしまうなんてこともよくあります。
新潟県醬油協業組合といえば、新潟県産の原料で仕込む「郷土の実り」の活動も知られています。天然醸造のため、ワインのように仕込んだ年によって味が変わることを売りにしています。
一方、飲食店に納品する醤油は安定して味を届ける必要があるため、味が大きく変わることはご法度です。醤油を発酵させる微生物はタンクによって菌の数も違うため、いつも均一にぶれない品質に出来上がるように慎重に管理しています。老舗の変わらぬ味の裏にはメーカーの努力も欠かせないのですね。
お客さんにとっては普段は見えない関係性ですが、つくり手のこだわりが詰まった醤油が地元に愛される名店の味を支えていました。