煮菜(にな)の日レポート

 

 

煮菜は、雪国の暮らしから生まれた郷土料理。青物のとれない冬の間に、塩漬けの菜っ葉を美味しく食べるため工夫がされてきました。乳酸発酵した漬菜から染み出る、なんともいえない味わいがあります。
最近では、忙しい家庭が多いなか食卓への登場回数は減っているかもしれません。
2月7日は、煮菜(にな)の日。煮菜の魅力を再発見する煮菜講座にお邪魔してきました。

みんな違うから面白い

会場の長岡市千歳にある子育ての駅ぐんぐんには、小さいお子さん連れの親子20組くらいが集まっていました。
今回がなんと14回目の煮菜講座。主催するNPO法人多世代交流館になニーナでは、中越地震以降、中山間地域のお母さんから煮菜づくりを実演・試食してもらう講座を続けています。

代表の馬場さんによると、煮菜は地域や家庭によって、材料も作り方も様々なのだそう。
「一言で煮菜といっても、作る人によって全然違うんです。今までたくさんのお母さんが作る煮菜をみてきましたが、ひとつも同じ煮菜はないくらい、とっても個性豊か。そんな煮菜から、私たちの地域も社会も、違っていいし、違うから楽しい。違うから支えあえる、と気づかされます。」
煮菜から暮らし方をみつめる興味深いお話からはじまりました。

 

今回の煮菜づくりの先生は、山古志地域の関静子さん。なんと、材料は菜っ葉だけ!うち豆や人参、油揚げなど、入れる具材は様々でしたが、具材がないのは過去の講座でも初めてなのだとか。とても新鮮です。


「昔は、山古志では野沢菜が多かったけれど、いまは体菜や青菜(せいさい)、長岡菜などで作ります。それぞれに食感や味わいが違いますよ。」と関さん。
今日は食べ比べのために体菜と青菜を使った2種類の煮菜を用意いただきました。

まず、塩だしの方法を説明してもらい、塩出し加減も確認。これくらいの塩加減になるまで、と実際に味見をしました。

 

会場のお母さんたちは、塩出し前の体菜を味わったことがないことを察知した関さんは、その場で塩漬けの体菜を試食させてくれました。

予想以上にしょっぱいことに驚く参加者の皆さん。でもしょっぱさのなかにもじわっ感じるとうま味があります。関さんによると、たくさん塩をしておくと、保存がきいて5月ごろまでもつのだそうです。漬け樽で漬けなくても、気負わずにポリ袋で漬けてもいいのよ、というアドバイスも。


塩出しした体菜は、食べやすい大きさに切り、油で軽く炒め、だし汁と醤油、酒で味付け。お好みの柔らかさになるまで煮含めます。

 

 

煮含めている間に、馬場さんから煮菜のポイント解説。
一見すると同じような見た目の煮菜に、どんな違いがあるのでしょうか。プロセスごとに教えてもらいました。

まずは、漬ける菜っ葉。体菜、長岡菜、野沢菜、青菜など地域によって違いがあります。体菜は茎が太くて柔らかい、青菜は色が鮮やかなので煮込んでも茶色くならないなど、それぞれ特徴があるのでお好みで。

そして、面白いのは、塩出しの方法。「切ってから戻す人もいれば、切らないで1本のままという人もいます。それを水から戻すか、お湯で戻すか、水を入れ替えるかどうかなど、ほんとに人ぞれぞれ。どれが正解ということではないので、紹介するのが難しいですね。」
また、煮るためのだし汁も様々。煮干しで出汁をとる人もいれば、鰹節と昆布の人、はたまた干し貝柱でだしをとるという本格派もいらっしゃるそう。
そして、具材は定番のうち豆、にんじん、油揚げのほか、ごぼうを入れたり、車麩を入れたり…みなさん思い思いに身近にあるものを入れているようです。どんな具材もおいしくまとまってしまう、煮菜の懐の深さを感じます。

調理法から具材選びまで、組み合わせは無限大。煮菜というひとつの料理でもこんなに違っていいんだよ、みんな違うんだよ、と言われているようで説得力があります。

「こういうやり方もあったのか」「この部分は一緒だね」とか、煮菜を話題にすると会話も盛り上がります。

そうこうしている間に、お楽しみの試食の準備ができました。
小さいお子さんが多いなか、菜っ葉だけの煮菜にどんな反応があるのでしょうか…

 

 

なんと、どの親子もペロリと完食!しっかり味がついているからか、パクパク食べていました。
話を聞くと、子どもに煮菜を食べさせたのは初めてというお母さんがほとんど!
なかには、市外出身で、今日初めて煮菜を知ったという親子もいらっしゃいました。

多世代が交流する、和やかな雰囲気にお子さんも食が進んだのかもしれませんね。

塩だしさえしてしまえば、意外と簡単に作れてしまう煮菜。作り方に正解はない、という言葉に背中を押されて、さっそく作ってみたくなります。市内のスーパーでは、漬けてある状態の「塩蔵体菜」も販売されていますので、ぜひお試しを。

暮らし方も子育ても、地域も文化も、違っていい、違うから面白い。煮菜から感じるダイバーシティ。
大切に残していきたい食文化ですね。