味噌仕込み体験レポート

11月27日、長岡市の食育総合講座「みんなの食育塾」で、味噌仕込み体験が行われました。
講師は、摂田屋にある味噌星六の星野正夫さん。こだわりの材料を使って、昔ながらの手作り味噌を仕込んだ様子をお伝えします。

手づくりの楽しみ、私だけの味噌

「手づくりの味噌は、皆さんの手についている『常在菌』が入るのが面白いところ。同じ材料を使っても、その人によって個性が出ます。星六と同じ材料を使ったからといって、星六味噌はできません。皆さんだけの味噌ができますよ。」と星野さん。

まず、柔らかく煮た大豆をつぶします。どのくらいの柔らかさまで煮るかを確認。親指と小指で挟む柔らかさ、と昔から言われますが、力加減は個人差があるので、星野さんが秤を使った見極め方も伝授。

大豆をつぶすのも機械ではなく、手作業に挑戦。粒感が残るのも手作りの良さ。

次に、大きなバットやすし桶に、つぶした大豆、塩きり糀(糀と塩を合わせたもの)、塩、種味噌をケーキのように重ねていきます。薄く均一に重ねるのがポイント。

糀の上に塩を散りばめて、雪が積もったような見た目。崩すのがもったいないよう。

材料をきれいに重ねたら、あとはひたすら混ぜていきます。これがなかなかの力仕事。簡単には混ざりません。

このときに使用する「入魂棒」は、星野さんが事前に枝切したときの欅の木の枝を用意してくれました。すりこぎのように断面が丸いと力が逃げてしまい、うまく力が入らないそう。太い枝の断面で、まさに魂を込めるように、叩いて叩いて均一になるように混ぜ込みます。

全体に大豆と糀と塩がバランスよく混ざった状態を目指します。折り返しながら、黙々と叩き続け、表面の糀がまんべんなく散らばるのを目印にしながら、均一に。「この混ぜ方にもその人の個性が出たりして、面白いね」と星野さん。

混ぜ終わったと思った方から、星野さんに見てもらいます。「先生、見てくださーい!」とあちこちで呼ばれますが、「まだまだですね~」のやりとり。

ようやく「いいでしょう」のOKをもらった方から、容器に詰めていきます。さっきまでもう腕が痛い、と思っていたのに、容器に詰めてしまうとなんだか手を離れて寂しい気持になるから不思議です。

味噌は容器に入れてさらしを敷き、重石をのせて熟成させます。夏に一度切り返しをして、食べられるのは10月ごろ。

「可愛がりすぎて、夏は涼しいところに置いてあげようなんて思っちゃだめ。お父さんが汗かいてビールがおいしく飲めるくらいの温度がいいんです。」人間が気持ちよく過ごせる温度が適温なのだそう。

作業が終わったら、お楽しみの味噌汁の試食。星六さん自慢の1年、2年、3年ものの味噌で作る味噌汁を飲み比べしました。「味わいが全然違う!」と驚きの声があがりました。

お味噌汁を3杯も飲んで体がポカポカしてきます。

食べ終わったころ、参加者に何年ものの味噌がおいしかったか、質問をしたところ、皆さん好みがわかれました。

「人間でいうと、1年ものは10代。まだ若いからフレッシュだけどコクは少なめ。2年ものは40代かな。失敗や挫折も経験したりして、ようやく人生に味が出てくるころ。この味が好き、という人が多いようですね。3年ものは、60代くらい。酸いも甘いも知ってその人らしさが染みついちゃってる頃。くせが強いから、嫌いな人は嫌いだけど、好きな人はこれじゃなきゃ絶対だめ!というコアなファンがいます。どれが正解じゃない。それぞれによさがある。それが面白いところ。」と星六さん。味噌に人生があらわれるなんて、なんとも奥深い世界です。

心地よい疲労感と、自分で仕込んだという満足感。
この日生まれたばかりの可愛い味噌が、それぞれのお家でどんな味に熟成されるか楽しみですね。

長岡市の食育総合講座「みんなの食育塾」では、日々の暮らしを豊かにする食の講座が企画されています。2月にはお醤油講座もありますよ。
興味がある方は、ホームページをチェックしてみてください。
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/fukushi/cate05/syokuiku/syokuikujyuku.html