「全国味噌鑑評会」で受賞多数!えちごいち味噌の技術力が高く評価される理由とは?

全国の蔵元自慢のみそが集結し、その技術の研鑽を図ることを目的とした「全国味噌鑑評会」。プロの技術者や研究者を審査員に迎え、約400品の中からその年の優れた逸品を選びます。各蔵元の技が詰まった力作ぞろいのなか、「農林水産大臣賞」をはじめとする数々の受賞歴を誇っているのが新潟県長岡市の「えちごいち味噌」です。業界内で支持されているみそはどのように生まれるのでしょうか?その秘密を探ってきました。

長岡市滝谷町にある。みそ汁の看板が目印。

えちごいち味噌のはじまりは昭和42年。江戸時代から続く老舗企業からみそ部門を“のれん分け”という形で独立させ、「品質と感謝の気持ちで新潟一になりたい」という想いを商号に託して誕生しました。かつて各家庭で何十キロものみそを仕込んでいた時代、大量の大豆を煮て材料をかきまぜるという男性でも大変な作業を手伝おうと「仕込みそ(蒸し大豆、麹、塩を混ぜたもの)」を提供。現在では原料と製法にこだわったみそを手がけ、県内の一部スーパーやお土産ショップ、首都圏のセレクトショップなどで販売しています。

 

原料選定から発酵管理まで妥協なし!
風味豊かなみそを育む現場へ潜入

48年間みそ造りに携わる製造部長の池野正春さん。

それではさっそく蔵の中へ。製造部長の池野正春さんの案内で、えちごいち味噌ならではのこだわりを探っていきます。

奥にあるのが大豆の脱皮機。皮部分は飼料として活用している。

まず目に飛び込んできたのは、産地や品種にこだわった大豆やお米。ベースとなる9種類のみそ造りをするために、それぞれ適した材料を使い分けるといいます。

「原料はシンプルなので品質が重要です。私たちはみその種類ごとに適した産地や品種の大豆を使用しています。大豆にはそれぞれ特徴があって、タンパク質や炭水化物の含有量により向き不向きがあるんですよ」

さらに仕入れた大豆に施すのは「脱皮」というひと手間。その目的は様々あり、なめらかな食感や華やかな香り、美しい色、雑味をおさえた味に仕上がるのだとか。吟醸酒や大吟醸酒造りにおいて、お米を削って中心部のみを使うことでクリアな味わいを目指す手法と似ているのかもしれません。また、みその種類によってはあえて脱皮をしないことで、濃厚で複雑な味わいに仕上げているそうです。

麹のいい香りが漂う麹室。温度や湿度に気を遣いながら製麹します。

続いて麹室(こうじむろ)へ。この日は3日間お米を蒸して発酵させる工程の2日目で、蔵人が平らにならす作業中。季節(温度や湿度)やその時の麹の状態を見ながら行う経験値が求められる繊細な作業で、表面がデコボコだと不均一な仕上がりになってしまうのだとか。

圧力をかけながら大豆を蒸煮する釜

麹はあらかじめ塩とまぜた「塩切り麹」を使用する。このひと手間が大切。

大豆は圧力をかけながら半煮半蒸し、麹、塩、そして発酵を進める酵母と共に混ぜます。ワインのような発酵臭を漂わせる自家培養酵母は、分解力や香りを高めてくれる必需品。これらを粘りがでないように適度にかき混ぜたらタンクに詰めて発酵・熟成させます。

発酵半ば頃には、みその上下を入れ替える「天地返し」を行う。

パック詰め、袋詰めは一つ一つ手作業で行う。

約900kg入るタンクの数はなんと200を超えるそう。発酵・熟成の工程では、長年培ってきた経験や感覚を活かし、みその状態を細やかに観察しながら温度管理をします。

「新潟の四季の温度変化は、微生物たちが活発に働くのに最適です。そのため蔵では“四季が移り変わるように自然な温度管理”を目指しています。人間のエゴである無理な加温はせず、“みそ本位”の視点をもつことが大切ですね」

そして、十分に発酵・熟成を終えたら、いよいよ蔵出しです。仕込みから出荷までには、実に長い時間を要しています。

 

「おいしさと品質」を求めて
蔵元が掲げるみそ造りへの信念

いたるところにこだわり満載でしたが、美味しいみそを生みだすポイントはどこにあったのでしょうか?その答えとして池野さんは「一つでも手を抜かないこと」と断言します。

「特に仕込みの部分は緊張感をもって行います。大豆の蒸煮や麹作りは最重要で、しっかりていねいに。タンクに詰めたらあとは微調整しかできません。発酵の変化にも敏感に。菌たちが心地よいと感じる環境を整えてあげます」

長年、みそ造りに携わってきた池野さんは、微妙な変化も感じ取れるそう。最高の状態の時にはまるでメロンのようにフルーティーな香りが漂うそうで、五感をフル活用して菌たちの世話をしていることが分かります。

「えちごいち味噌のモットーは『品質第一・感謝の心』です。お客さま、生産者さま、そして“おみそそのもの”に感謝をし、『おいしさと品質』を求めてみそ造りを続けてきました。原料のポテンシャルに頼りすぎず、蔵人の技術力を高めて改良を重ねてきた結果が、みなさんに喜ばれる味わいにつながったのではと自負しています」

 

菌たちが熟成を促す
こだわりの「無添加生みそ」

好みに合わせて選べるみそはバリエーション豊富。

そんな蔵元がこだわるのは「無添加の生みそ」であること。発酵を止める加熱殺菌をしないため、菌たちが生きた状態で出荷されています(一部商品で、酵母の働きを止める酒精添加あり)。色や味わいが微妙に変化していくので、心配する声が寄せられることもあるのだとか。

「元来みそは菌が生きている食品なので、生きたままお届けしています。熟成が進むのを変化と捉えるか、はたまた劣化と捉えるか……菌たちの働きを受け入れ、変化もまるごと楽しんでいただけたらと思います」

全国味噌鑑評会、新潟県みそ品評会で幾度も受賞している「匠の味」。しっとりとした味で豊かなコクがある。

無添加生みそ「丸しぼり」。赤みそは大豆のうまみが濃厚で、白みそは麹のまろやかさを感じられる。

蔵元併設の直売ショップ。

ベジタリアンライフスタイル雑誌「veggy」vol.63にて「三種の麹 あわせ味噌」とマヌカハニーを混ぜ合わせた調味料で作るみそ炒めレシピが掲載された。

Instagram(https://www.instagram.com/151miso/)では変わり種みそ汁やみそ料理を紹介している。

 

味、色、香り、舌ざわり、そして菌たちを活かすこと――目の前にあるみそに真摯に向かい、「おいしいみそを届けたい」と信念をもって挑み続けてきた結果が、数々の受賞につながってきたのかもしれません。丁寧に作られたそれらには、食べる人への愛情が宿っています。

 

株式会社越後一
[住所]長岡市滝谷町1340
[電話]0258-22-2201
[営業時間]8:30~17:00
[定休日]土・日曜・祝日