手作り麹と天然醸造にこだわりあり。新潟農産が貫く「本物の味噌」へのポリシー

発酵ブームをきっかけに“パワーフード”として注目される味噌。生活習慣病予防や美肌効果、アンチエイジング効果など、栄養価の高さが医学的にも証明されています。しかし、市販品の原材料や製造方法は千差万別で、中には添加物がたっぷり入ったものも……。昔から「味噌は医者いらず」と言われていますが、現代においては一概にそうとは言えないのかもしれません。

新潟県長岡市の小国エリアにある「新潟農産」は、先代の技術をまじめに継承する味噌蔵。「世界一の健康食品」と謳う手作り味噌に誇りをもち、昔ながらの製法を貫いています。そのこだわりを伺いに蔵を訪ねました。

「世界一の健康食品」立て看板が目印。

長岡市中心部から南へ約30km、車を40分ほど走らせた場所にある小国エリア。周囲を山に囲まれ、のどかな田園風景が広がる国道沿いに新潟農産があります。

 

こだわり味噌はここで生まれる
菌たちが棲みつく蔵を見学

代々受け継いできた製麹板は3,000枚以上ある

蔵に足を踏み入れるとまず目にとまるのが、階段脇にある何段にも積み重なった製麹板(麹を作るための道具)。創業時から大切に使用されてきた杉の板は、経年変化で風合いが増し、先人たちが築き上げてきた歴史を物語っているようです。

蒸米を冷ます機械(左)、米を蒸す機械(奥)、味噌の重しに使用する石(右下)

階段を上った先は、清潔に保たれた製造室。こちらの部屋では米を蒸して冷ます工程が行われ、約30℃に冷めたお米は1階の麹室へポトンポトンと落ちていきます。

冷めた米に「種麹」と呼ばれる胞子をふりかけ、製麹板に1枚1枚詰めて保温する

冷めたお米はここで麹へと生まれ変わります。麹箱もやはり年季が入っていて、まるでびっしりと仲間の麹菌たちが棲みついているようです。

(左)製造部の大宮雄治さん(中)社長の奥様・山本恵子さん(右)山本誠一社長

新潟農産の創業は1974年。初代は麹作り専門で、2代目が味噌をはじめとした商品を開発。そして現在3代目社長の山本誠一さんは、先代の技術を変わらず継承した味噌作りを続けています。社員は「製造部長」と信頼を置く大宮雄治さんと社長の奥様の二人だけ。毎年12~4月の仕込み時期にアルバイトを雇ってフル稼働しています。意外なことに、新潟の地に蔵をもちながらも、売り上げの9割が営業所をもつ群馬県とのこと。個人宅や旅館に配達する昔ながらの方法で、地元の人との信頼を育んできました。

 

自宅で発酵の醍醐味を味わえる
材料や「仕込みみそ」を販売

自慢の生麹、新潟県産と北海道産の大豆

「みなさんに手作り味噌を楽しんでほしくてね。材料や“仕込みみそ”の販売がメインなんですよ」と山本さん。ていねいに作る生麹、新潟県産と北海道産の大豆など、こだわり派も満足できる材料を用意。また「仕込みみそ」とは茹で大豆、麹、塩を混ぜた状態のもの。これなら自宅に持ち帰って容器に詰め、発酵してできあがるのを待つだけ。作る手間なしに元気な菌が生きた味噌を楽しめます。

先代と変わらない味わいがリピーターにも喜ばれている

自慢の「米みそ 源作じいさんの昔づくり」は2代目が考案したもので、当時の作り方そのままに良質な材料をたっぷりと使用。こだわりは自然に発酵させる「天然醸造」で、1年以上じっくり発酵させることでコク深くなるそう。通気口付きの包装は菌たちが生きている証。作り手のエネルギーが伝わってくるような深い味わいです。

サラダ、うどん、鍋物、カップラーメンなど万能に使える

製造部の大宮さん一押しは「なんばんしょうゆ」。希少な赤い神楽南蛮を4度塩漬けにし、甘酒、ニンニク、ショウガと合わせたオリジナル調味料です。その味わいは甘さの後に爽やかな辛みが広がり、香味野菜がいいアクセントに。ホカホカの白ごはんの上にのせれば、おかわりの手が止まらなくなりそう!

その他、野菜を特製床に漬けこんだ「みそ漬け」、豆味噌作りには欠かせない「豆こうじ」も販売しています。現在、取扱店は「JA柏崎愛菜館」のみですが、電話注文をすれば蔵受け渡しで対応してくれるそうです。

 

先代から受け継がれる
“本物の味噌”への想い

初代から続く製麹技術は、約60年の時を経た現在も受け継がれています。その工程は、米を蒸し、「種麹」と呼ばれる胞子をまいて保温するというシンプルなもので、3日間手間暇かけて行われています。

「私たちがこだわっているのは手作業。まるでお米に花が咲いたように、美しい菌糸が伸びるんです」と見せてくれた生麹は見事にホワホワ!

原料米には山本さんが育てた米も使用する。にがりをまいて栽培することで甘みを出すというこだわりよう!

機械で麹を作った場合、ここまで表面に菌糸が伸びた板状にはならないそう。手作業で種麹をふりかけ、製麹板に詰める苦労があってこそ、品質の良い麹に仕上がります。さらに「工程ごとに温度と湿度を調整するんです。麹菌が喜ぶ環境を整えてあげるのに、かなり神経を使いますよ」と山本さん。麹の発酵具合が気になり、就寝前に蔵へ足を運んで状態チェックをすることも度々あるのだとか。米から麹になる過程は、人間に例えると赤ちゃんから成人になる人生ストーリーのようなもの。菌たちの営みは神秘的で感慨深いものがあります。

「私たちが作る味噌は、良い麹があってこそ。良い材料と自然な発酵で作られています。つまりは昔ながらの“本物の味噌”なんです」と山本さん。昨今の消費者ニーズに振り回されず、時代が変わってもなお信念をもって突き進む。ぶれない想いが初代から変わらない味噌の味わいとなって表れています。その真摯さこそが“本物”を求めるお客さんの心をつかんで離さない理由なのかもしれません。

 

Text and Photos: 渡辺まりこ

 

新潟農産
[住所]新潟県長岡市小国町七日町2684-3
[電話]0258-95-3247
[営業時間]8:00~17:00
[定休日]第2・4土曜、日曜